防音する際に気をつけなければならないことは、遮音効果のみを追求してしまうことです。遮音効果が高いのは質量のある壁で遮ることですが、その反面、騒音を跳ね返してしまうのです。
騒音をボールに例えて表現してみます。
薄いベニヤ合板で作った壁と、重たいコンクリートで作った壁に野球ボールを同じエネルギーで当ててみましょう。当然、薄いベニヤ合板の壁に当てたボールは、勢いが減った状態で戻ってきます。投げたボールの勢いが強ければ、壁に穴が空いてしまうでしょう。
しかし、重たいコンクリートの壁は、壊れずに勢いよく跳ね返ってきます。
壁に対しての騒音も同じ様な現象が起きます。薄い壁で遮られた空間はエコー(反響音)があまりかかりません。なぜなら薄い壁から音のエネルギーが通り抜けているからです。
コンクリートで閉ざされた空間は、反響音が大きく残り、エコーが掛かった状態になります。
このことから、色々なことを推測してみましょう。
重たい壁にボールを投げると、勢いよく跳ね返りますが、跳ね返ったボールが投げた位置より後ろに転がったりします。音に置き換えて似た減少は、閉ざされた空間内では反響音がありすぎて、音源がどこにあるか分からなくなってしまうことと同じです。またボールを投げてから壁に当たる時間よりも、ボールが転がっている時間の方が長いのも事実です。
さて、では薄い壁でも音を外に出さないようにする事ができるのでしょうか?
先程の、ボールに例えてみると、薄い壁にボールの衝撃を吸収する厚いスポンジを貼ってみるとどうでしょうか?スポンジに当たったボールのエネルギーは大きく減少します。厚く貼られたスポンジはボールのエネルギーを減少させて、壁まで威力が伝わらなくなります。壁も壊れ無い様にできます。
そして、このスポンジを吸音材に置き換えると、音は吸音材にエネルギーを吸収されるのですから、薄い壁でも音の透過は防ぐことが可能となるわけです。
遮音材は音を遮るのには非常に効果的ですが、質量(壁の面密度)が重ければ跳ね返してしまう事を注意しなければなりません。そして、吸音材は必要でないように感じるかもしれませんが、防音にとっては無くてはならない措置となるのです。
遮音材が剛ならば、吸音材は柔。
ことわざの「柔よく剛を制す」に当てはめて考えても良いかもしれませんね。
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遮音 防音防振の豆知識